なんでもない毎日が、かけがえのない宝物なのん

登山記録 西山谷

最近すっかり鉄専用と化していた当ブログで登山記録を書くのはほぼ1年ぶりでしょうか。どうやら記事にするのは昨年5月以来のようですが、久々に山に行ってきたので記憶の新しいうちにしっかり書いておきたいと思います。

本格的な山行はおそらく昨年5月のハチノス谷以来とほぼ1年ぶりになりますが、あまり暑くなると私のような体力のない人間はすぐ疲弊してしまいますし場合によっては熱中症等の危険もある、ということで山に行くのはどうしても春秋に固まってしまいます。しかし今ぐらいの時期ならその心配もなく、山のほうならまだ桜も残っており、加えて前日の雨のおかげで沢に入れば大迫力の滝が楽しめるに違いないと出撃。過去に摩耶東谷・芦屋地獄谷・ハチノス谷の単独踏破に危なげなく成功したことを考え、表六甲では定番かつ難関との呼び声高い西山谷への入渓を決めました。過去何度も滑落などの遭難事故が発生している危険地帯で決して気は抜けませんが、堰堤・滝とも巻道がしっかりとしておりそちらを確実に使えば初心者でも問題なく通過可能という人もいます。トレッキングシューズで足元を固めただけの私は無理はせず、滝はすべて巻き危険なら途中で油コブシへエスケープする、ぐらいの気持ちで入山しました。

若干寝坊したものの10時過ぎに家を出てJR住吉駅からバスに乗り、渦森台4丁目BSで下車。この先の河原広場は小さい頃よく父に連れてきてもらった場所なのですが、その奥にあるのがまさか難関西山谷だとは思いもしませんでした。ともかく千丈谷第一堰堤の横を通過し、10時50分に谷へと足を踏み入れます。
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10:50 千丈谷第一堰堤横の道標

第二堰堤と第三堰堤を越えるといよいよ谷へ。思った通り前日の雨のためか水量は多めで、涼しげな気持ちのよい沢が楽しめます。踏み跡は比較的しっかりとついておりますが紛らわしいところもいくつかあり、最初からある程度のルートファインディング能力を求められました。入渓してすぐは小滝が連続しており、どれがどの滝かは判然としません。
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11:11 F2?
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11:12 F3
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11:15 F4

いくつかの小滝を越えつつ沢伝いに歩いて行くと、ほどなくしてこの谷最初のハイライトであるF5「ふるさとの滝」に到達します。この谷に多い岩肌を流れるだけの滝とは違い、垂直に切り立った岩と岩の間の割れ目を豪快に落ちる立派な滝です。写真では伝わりづらいですが、実際にはかなり高度感がありました。
写真 2015-04-11 11 24 03
11:24 F5「ふるさとの滝」

この滝は少し下流の左側から巻くのですが、岩の割れ目直上付近は苔が多くて滑りやすいうえに足をかける場所が少なく、個人的に一番危ないと感じた場所にはロープもないため滑落の危険があります。かといって右側から巻くこともできないのでなんとか足場を探して慎重に通過しましたが、高いところはあまり得意でないこともあって正直生きた心地がしませんでした。

やっとのことでふるさとの滝を越えると次の難関は悪名高き第五堰堤です。この谷ではもっとも危険な巻道を通る必要があり、過去に死亡事故も発生しているとのこと。覚悟を決めてセオリー通り下流左手のから巻きにかかります。
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11:29 第五堰堤

巻道に取り付くとまもなく鎖場がありますが、ここは手足をかける場所がしっかりしており確実に三点支持ができれば鎖なしでも越えられそうな感じです(もちろん初見は怖いので鎖使いましたが……)。少し時間はかかったものの無事登りきり堰堤頂部のさらに上を高巻きしてさらに奥へ。すると垂直岩盤の上からロープが下がっており、どうやら下に降りられる模様。ヒヤヒヤしながら降りてみますが、増水のためか池状になっており沢靴を持たない私に強行突破できるような水深でもないので諦めて登り直し、かすかな踏み跡を頼りにさらに奥に進んでからなんとか沢に復帰することができました。さすが悪名高い第五堰堤越え、もう勘弁してくれといった感じです。ですが焦らずしっかりホールドできるポイントを探せばなんとか通過できるかなというところでした。このあとしばらく歩くとF6があります。
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11:45 F6

F6の手前あたりから見えてくる豪快な水しぶき。F6を越えるとすぐに視界が開け、広場の奥に落差20mを越えるであろう立派な大滝が姿を現します。ここがこの谷の核心部、通称西山大滝です。写真ではいまいち高さが伝わりませんが、下まで行ってみるとその姿はまさに絶壁。ここまで苦労して歩いてきた者だけが見ることのできる秘境の大滝は迫力満点で、頑張って歩いてきた甲斐があったというものです。
写真 2015-04-11 11 47 29
11:47 F7「西山大滝」

滝の前で気持ちのよい陽射しとマイナスイオンを浴びてしばし休息。持ってきたフィルムカメラで何枚か写真も撮ったのち左側から高巻き、無事大滝を越えました。ここから先はしばらくそのまま谷沿いに歩き、堰堤は適宜巻いていく感じになります。やや巻道がわかりにくいところがあったり支谷との分岐があったりしますが、巻道は高巻きしてもすぐ沢へ降りる踏み跡を探し、川の分岐では水量の多いほうを選べば間違えることはほぼなさそうです。とはいえ事前のリサーチは必須ですが。
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12:01 F8
写真 2015-04-11 12 09 30
12:09 F9
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12:10 F10「二条ノ滝」
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12:13 F11
写真 2015-04-11 12 18 51
12:18 F12

大滝以降は順調に登り続け、小滝が多かったためF13がどれかは判然としなかったもののほとんどの滝を確認することができました。F13を素通りしたあと小さな堰堤を1つ越えたところで小休止し、ここで昼食。おにぎりを頬張って燃料補給し再び遡行開始です。
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12:46 F14
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12:47 ラダーステップつき堰堤

ここまでの堰堤はすべて巻道を利用した高巻きでしたが、この堰堤のみ比較的最近作られたためか作業用と思しきラダーステップがついており簡単に越えることができました。上る前は高度感があり怖かったのですが、いざ足を掛けてみれば下を見る暇もなくひたすら上るしかないので特に恐怖感はありません。ただただ面倒なだけですね……

このあとさらに一つ堰堤を越えますが、ここは少々道が厄介でした。右に逸れていく支谷との分岐点を過ぎるとすぐに堰堤があるのですが、これを巻くには分岐点付近から2つの川の間にある尾根方向に行かなければいけません。ただし尾根を登りすぎると別の方向に行ってしまうので、本流である左の川を見失わないように登りました。途中鎖場と階段があり、そこを越えるとクリアとなります。堰堤を高巻いて沢に戻るとすぐにF15に出会いました。
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12:57 F15「ソーメン滝」

細い水流がいくつも岩肌を這っており、さながら麺のような様子。ソーメン滝とはよくいったものです。左側を直登できそうな雰囲気でしたが、ヤマレコのある記事では滑りかけたため引き返したと書いていたのを思い出しおとなしく巻道を選択。谷に戻るとすぐにF16があり、ここまで来ればもう終盤です。
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13:03 F16

ここまで来れば水量はさほど多くはありませんが、それでも立派な滝です。この滝を越えるといよいよ出口は近く、最後の滝であるF17「愛情ノ滝」に到達しました。
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13:06 F17「愛情ノ滝」

細くとも力強く落ちる一筋の水流に引っ掛けて「愛情ノ滝 あなた一筋に」とのこと。ふるさとの滝といい、もしかしてこの手の命名って結構言葉遊びが入ってるのでは……と思いつつ滝をよく見ると右側にもう1本細い水流が。昨日の雨のため増水しているのでしょうが、これじゃ一筋じゃねえじゃん!などと心の中でツッコミを入れつつ右側から高巻きます。ちなみに家に帰ってから他の人の遡行記録を見ると「今日は水量も多く、隣の通称『不倫の滝』も元気であった」などと書かれていました。まったく同じことを考えていたとは言えるはずもなく。ここで迷うと谷から脱出できなくなるおそれがあるので慎重に道を選び、鎖場を越えてしばらく登ると笹薮に入ります。膝上から腰ぐらいの高さはありますが、踏み跡は明瞭で特に迷う要素はありません。10分ほど歩くと山上の建物が見えてくるようになり、やがてサンライズドライブウェイへと脱出。無事本谷の正規ルートを完走することに成功しました。
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13:25 サンライズドライブウェイ出合

所要時間は入渓から脱出まで2時間35分、途中休憩したり写真を撮ったりしていた時間を除けば歩行自体はせいぜい2時間というところでしょうか。決して長い谷ではありませんでしたが一瞬たりとも気は抜けず、緊張感を保ちつつも清流住吉川の源流域を存分に楽しむことができました。また一般によく言われる「未経験者の単独入山はご法度」「登攀用具が必要な谷」などですが、インターネットの発達したこの時代、先人の記録をよく読んできちんとメモをとって微妙なところでは必ず確認するようにすれば道に迷う危険もほとんどなく、単独での踏破が必ずしも不可能というわけではないというのが正直なところです。もちろん万一のことがあった時に消防・警察等にすぐに連絡してくれる同行者がいたほうが良いのは間違いないのですが、事前準備を怠らず安全な巻道を丁寧に探し辿っていくことさえできれば十分に歩けると思います。登攀用具は滝を直登するならもちろん必須だとは思いますが、巻道を探すなら備え付けのロープや鎖等で十分に越えられると思います。現在残されているものは強度的にも問題なさそうなのでどんどん使っていっていいのではないでしょうか。ただし最低限三点支持による急斜面の登り降りはできないと厳しいと思います。

難関と言われるだけあってこれまで経験した谷とは比較にならない厳しさでしたが、そのぶん滝も立派で歩いていて本当に退屈しない谷でした。ふるさとの滝巻道と第五堰堤の巻道で相当怖い思いをしたのでまた行きたいかと言われると微妙なところではありますが、いずれ沢靴を買うことがあればその時は真っ先に歩いてみたいところです。市街地の裏山のようなところにこんな自然が残されている六甲山、せっかく地元に住んでいるのだしこれからもっと楽しまねばと思えた山行でした。
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